「聖イッサ伝」
第7章
1.イッサのことばは、彼が旅する国々、異教徒たちの間に広がり、人々は偶像を捨てた。
2.真実の神の名をたたえるイッサに、祭司らが強制し、イッサは祭司に対する非難と、彼らの偶像の愚かさについて、公衆の前で論証することになった。
3.イッサは言った。「もしあなたがたの偶像や動物が強い力を持ち、ほんとうに超自然の働きをするのなら、彼らに命じて私を地面に打ち倒させてみなさい」
4.すると祭司は反論した。「もしわれらの神々が、おまえの神に愚かに見えるなら、おまえの神に奇跡を働かせ、われらの神々を打ち壊してみよ」
5.しかしイッサをこう答えた。「私たちの神の奇跡は、天地創造の最初の日から働いています。奇跡は日々、瞬時も休まず起こっています。それを見る心のないものは、この世の最も美しい贈り物から遠ざけられている、哀れな人々です。
6.「そして神の怒りが直接向うのは、石や金属や木のかけらで作られた、いのちのないものにではありません。それを作った人間たちにです。救いをほしいと思うなら、作ったすべての偶像を、すべて壊してしまわねばなりません。
7.「石や砂粒と全く同様に、人の目から見れば偶像は無価値です。ただいつか人が取り上げて、利用してくれるのを、辛抱強く待っているだけ。
8.「それと全く同じように、人もまた終わりの日の裁きのとき、受け入れてくださる偉大な神の恵みを待っています。
9.「しかしあなたがたには禍(わざわい)があるでしょう。あなたがた人間の敵。あなたがたが待つのは、恵みではなく神の怒りです ― あなたがたには禍があるでしょう。神の力を試そうとして、神に奇跡を期待するあなたたち。
10.「なぜなら神が怒って滅ぼそうとしているのは、偶像そのものではありません。それを作ろうとする人間たちなのです。彼らの心臓は永遠の火に滅び、引き裂かれた肉体は、満腹するまで飢えた野獣の餌になるでしょう。
11.「神はその支配する群れの中から、汚れたものを追い払われます。だが、神から授かった内面の霊性に気づかなかったため、迷ってしまった人たちなら、神はもう一度取り戻そうとされるでしょう」
12.イッサの激しいことばの前に無力な祭司を見て、異教徒たちはますます、イッサのことばを信頼するようになった。そして神の怒りを恐れ、偶像を粉々にした。祭司らについて言えば、彼らは民の仕返しを恐れ、急いで逃げた。
13.イッサは更に異教徒たちに教えた。永遠の霊を、自分の目で見ようと骨を折るな。自分の目ではなく、心でそれを感じるよう、また純粋な魂によって、永遠の霊の恵みにふさわしい自分になるよう努めよ、と。
14.「人を犠牲に供えてはなりません。それだけでなく」とイッサは彼らに説いた。「どんな生き物も供物として捧げてはなりません。なぜなら存在するすべては、人のために作られているのですから。
15.「あなたの隣人から何も盗んではなりません。額に汗して隣人が得た物を奪ってはなりません。
16.「だれも欺いてはなりません。あなたが欺かれないように。最後の裁きの日の前に、あなた自身を義とするよう努めなさい。その日が来てからでは遅すぎます。
17.「放蕩に身を委ねてはなりません。神の掟に背くことだから。
18.「至上の幸福は、清く身を保つことによって得られます。それだけでなく、他人を導き、本来の完成を得させることによっても同じです」
「イエスの失われた十七年」(エリザベス・クレア・プロフェット著/下野博訳)より
(続く)