天国への一歩

神・霊・魂、霊の見分けの話題。キリスト教信仰が出発点です。

「主は、生きておられる」(6)

私は胸に置いた聖書を握りしめて、弱り果てた心の中で神さまに祈りました。「神さま。私はあなたに祈ったことがありません。祈り方が分からないのです。しかし、あなたのみことばどおりに私の罪を一つずつ告白しますから、どうか私の罪を赦してください・・・。」そして思い出せる一つずつの罪を告白しだしました。

するとその時です。私の内で物凄いことが起こりました。私は自分が一人だと思っていたのです。しかし、私が神さまに罪を告白しようとした時に、もう一人の私が現れて、「駄目だ!何をやっているのだ。神なんかいない。愚かな真似はするな。お前らしくない。お前の犯した罪は男らしくお前が持って死ぬのだ。それを空気にしゃべってどうするつもりだ!」と、祈っている私に語りかけてくるのです。

私はその声を聞いてギョッとしました。私の内にもう一人の自分がいたからです。そしてその声は、私の頭の中から聞こえてくるのです。私の祈りはその声に消されそうになりました。私は必死になって神さまに助けを求めました。「神さま。助けてください!今こうしてあなたに罪を告白している私が本当の私なのです。この頭の中にいるもう一人の私が、あなたを信じさせないように邪魔をしてくるのです・・・。神さま。私は分かりました。このもう一人の私が、今までの私の人生を無茶苦茶にし、私に罪を犯させ、私を死に追い込んだ張本人です。どうかこの邪悪な張本人を私から追い出し、今あなたに罪を告白して祈っている本当の私を助けてください!」

そう嘆願しつつ私は自分の罪を一つずつ、心の中から引きちぎるようにして神さまの前に告白していったのです。思い出せる限りの罪を全部告白しました。そして自分が告白した数々の罪を見た時、初めて、私はなんという罪深い人間だろうか、なんて汚れた人間だろうかと思いました。

果たしてこんな罪深い汚れた者が、神さまに罪の告白をしただけで赦されるのだろうかと思いました。そしてすべての罪の告白が終わった時、「神さま。私をあわれんでください。私にはまだ自分で知らない罪があると思いますが、どうかお赦しください。」と祈ったその瞬間、私の暗闇の目の前にイエス・キリストの十字架がはっきりと映し出されました。私は思わず叫びました。「イエスさま!私はあなたを信じます!」

その瞬間に、私は意識を失ってしまったのです。

三日間、私の肉体は意識を失っていたそうです。しかしその三日間、無の状態ではありませんでした。私の魂は、はっきりとした意識の中にあったのです。

私は意識を失ったその瞬間から、真っ暗な闇の中を落ちていました。いや、落ち続けていたのです。恐ろしさのあまり悲鳴を上げながら落ちていたのです。その暗黒の中に私の全存在がありました。私はその暗黒を見、恐怖を感じ、落下しつつあることを知り、悲鳴を上げる声を持っていたのです。肉体を持っている私の感覚と同じものを私の魂は持っていたのです。そして私の落ちて行く暗闇は恐ろしいまでの暗黒でした。

聖書はそこを「暗闇の外」と書いています。そしてその暗黒は凍りつくような静寂でした。まるで遠い宇宙の彼方の空間に放り出されたように、私の悲鳴だけが不気味に響いていました。聖書はそこを「音無き所」と書いています。その暗黒と静寂の中を私は限りなく落ち続けていたのです。聖書はそこを「底無き所」と書いています。私は落ちながら必死になって思いました。「なぜこんな所に落ちるんだろう・・・。私は自分の罪を神さまに告白したのに・・・。イエスさまの十字架を見て、私の罪のために死んでくださったと信じたのに、なぜ落ちるのだろう・・・。主よ!助けてください!」と叫び続けたのです。私の意識を失った肉体も三日間、「主よ!助けてください!」と叫んでいたそうです。

落ち続けて随分時がたったことを知りました。これだけ深く落ちてしまったらイエスさまでも私を助け出すことを不可能だという絶望感が襲ってきました。私のような罪深い人間は、神さまの救いの対象にはならないのだという失望感と諦めがきました。その絶望のどん底の中で、突然私が見たものは、暗黒の中に映し出された白い足跡でした。私の目の前に白い足跡が転々と闇の中に続いていたのです。

それを見た時、私の絶望は歓喜に変わりました。「イエスさまの足跡だ!」と叫び、その白い足跡が続く彼方を見ました。それから、『わたしに、ついて来なさい』という御声が聞こえて来ました。やっぱりイエスさまは私を見捨てられなかったのです。私は夢中で自分の足をイエスさまの御足跡に乗せました。そしてその次の足も・・・。

暗黒の中でイエスさまの白い足跡をたどっていた私は、そのままの状態で意識が肉体の中に戻りました。肉体も立ったままで次の足跡を探そうとしていたのです。

(つづく)