天国への一歩

神・霊・魂、霊の見分けの話題。キリスト教信仰が出発点です。

遠視者の見た「神の箱」(2)

(英語版『スターゲイト』: Psychic Warrior)

 

「オーケイ、じゃあこうしてくれ。振動が少なくて、それを見ることができるかもしれない時間へ移動するんだ」

(略)時間の流れを移動することに意識を集中し、目を閉じた。眩暈がしてきた。これは移動速度のはやさを意味している。吐き気を抑えるには、ずっと目を閉じているのがいちばんいいようだ。やがて、しだいに速度が落ち、停止した。目を開くと、じつに奇怪な光景が目の前にあった。

部屋の中央に農夫たちの一団がいて、石を削り、さっき見た台座を彫っている。(略)古式ゆかしい装束に身を包んだ四人の男が金色の箱を部屋に運び込んでくるのを、ぼくは驚きの目で見守った。箱の四隅をひとりずつ支え、石の台座の中央にうやうやしく載せると、こうべを垂れて部屋を退出した。男たちは巨大な石を押して石室の入り口をふさぎ、やがて外の光が完全にさえぎられた。奇妙なことに、金色の箱が部屋を明るく保っていた。そして、真っ暗な洞窟の中で感じたのとおなじ奇妙なエネルギーが石室を満たした。脅かされているような感覚が心に忍び寄る。箱に近づくなと警告されているのを感じた。

「どうなってる、ディヴィッド?」

「箱の前にいる。すごく妙な感じだ。とても強力な神の前にいるような感じ。金色の箱がその力のシンボルで、それ以上近づくなと警告している」

「警告は無視して、近づけるだけ近づいてくれ。可能ならそれにさわって、どんな感覚がしたかを報告しろ」

そちらに向かって移動した。「金色の箱の上に、動物が載ってる」

「本物の動物?」

「いや、小さな像だ。背中に翼が生えてて、それがうしろ向きに上のほうまでのびてる。箱自体、すごく強力だ。もしかしたら、箱を守っているものが強力なのかもしれない。なんだか知らないけど、これ以上は近づけない。傷つく危険がある気がする。どうも気に入らない。」

「いいか、おまえは物理的にそこにいるわけじゃない。しかし、もし生身の体でそこにいたらどうなると思うか、それを聞かせてくれ。その感覚を報告しろ」

「命あるものはなにひとつ、この箱の前にいられないと思う。おなじ部屋にいることさえできない。もし生身の体でこの部屋に入ったら、たちまち消えてしまう」

「死ぬ?」

「いや、”死ぬ”っていうのとは違うと思う。むしろ蒸発するっていうのに近い。でもそれは、べつの場所への移動を意味してるんじゃないかという気がしなくもない。ただ、その移動は自分でコントロールできない。つまり、だれもここに入ってはならない定めだってこと。ぼくらだって、ここにいちゃいけないんだ。なにか強力で神聖なものに対する侵害になる」

「おっと、いまいったその言葉、”神聖な”ってやつについてもうちょっと検討してみようーその箱の本質をのぞいてみろ。どんな神聖なものが見える?」

箱から目を離さず、出口を視界から逃さないようにしながら、箱のまわりを用心深くまわってみた。「ええっと、このシンボルは道具だと思う。あるいは、道具として使われていた」

「どういう道具だ?」

「はっきりとはわからない。きわめて高尚な目的があり、長い年月にわたって大勢の人々に仕えた。それから、また必要になるときまで、ここに安置されることになった。これを使いこなそうとして大勢が死んだ。ここにやってこようとして死んだ人間はもっと大勢いる」

「どうしてこんな人里離れた場所に置かれていると思う?」

「ふたたび呼び出されるときまで隠されたんだ。いまのところは間に合ってるけど、永遠にじゃない。守られている。秘密を暴こうとした人間は途方に暮れ、混乱するーそれも箱の防御のひとつ。うっかりつまずいたら、殺されるか、秘密を明かすことがないようにべつの場所へと連れ去られる」

「ようし。おまえがそっちに行ってもう一時間四十分になる。切り上げて帰還しろ」

聞きたかった言葉だった。この洞窟にいると、ひどく不安で無防備な感じがする。「了解。帰途につく」

(つづく)

『スターゲイト』(ディビット・モアハウス)(翔泳社)(P196-199)