妻について
私は彼女と結婚して十年以上になりますが、彼女と一緒に生活してみて、なんと素晴らしい女性だろうかと驚いています。こんな清らかな女性は世界に二人といないと思いました。妻をよく知っておられる人は、私が無理をして賛辞の言葉を言っているのではないことを了解してくださると思います。
私は彼女から人格的に大きな感化を受け続けてきました。不幸な過去を持った私は、社会人としてもキリスト者としても、人格的には最低の人間でした。それは伝道団体でも神学校でも、私の粗野な人格を変えることができなかったのに、神さまは彼女と結婚させてくださったことによって変えてくださいました。私は神さまのなさる方法につくづく感謝します。愛だけが人を変えることができるのですね。
最近、私たち夫婦はある教会に招かれました。彼女が賛美し、私が証しをさせていただいたのです。
証しは午前と午後に二回しました。そして午後の証しが終わった時に、その教会の牧師先生が、私が伝道団体の出身であることを紹介してくださいました。その教会には伝道団体の人たちも来ていたからです。
紹介が終わった時に、一人の伝道団体の人が私に近寄り、しげしげと私の顔を見ながら、「あなたは本当に二十年前に伝道団体におられた人?私は朝からあなたのお証しを二回も聞いていたのに、あなただとは全然気がつかなかった」といって、不思議そうに私を見つめていました。
別にその人の目が悪かったのではありません。私はその人が午前も午後も来ていることを知っていました。私は少し恥ずかしかったのです。神さまにきよめられたというには、程遠い者だったからです。
するとその人が感心しながら、「人はここまでも変わるものですか。どうして?」と尋ねました。私は、「妻に感化されたのです」と答えておきました。その人は横にいる妻を見て、「やっぱりねえ」とうなずきました。私は本当にそうだと思います。イエスさまが愛する妻を通して私を感化してくださったのです。
私が彼女の夫として、一番素晴らしいと日々思うことは、彼女がいつも新鮮な人であったということです。十年も一緒に暮らせば少々鼻につくのが本当ですが、私と彼女とは仕事場でも一緒です。彼女の存在が空気のように思えてもおかしくない年月がたっています。しかし彼女はいつも新鮮なのです。これは私にとって不思議でなりませんでした。
私は今まで彼女がふてくされたり、無表情な顔をしているのを一度も見たことはありません。いつも新鮮で生き生きとしているのです。そして非常に優しくて、お人好しで人に利用されやすく、無駄なことでも真剣になってするタイプです。もし彼女を利用する人がいたとしても、その人自身が彼女の純真さによって良心の痛みを覚えるでしょう。
私はそんな彼女を見ていると、時々彼女の背中を覗いて見たくなるのです。天使のように羽根が生えているのではないかと。もちろん夫の立場から見れば、外の主婦の人たちと比較すると欠点もあります。しかし私はそれを苦にしません。その欠点を補って余りある素晴らしさが彼女にあるからです。
私が彼女に対して恐れていることはただ一つ、彼女の欠点をつついて彼女の天衣無縫な素晴らしさを壊さないことでした。彼女は私にとって実に楽しい存在です。ある時は母親のような世話焼きであり、ある時は私が保護してやらねばならない幼子であり、またある時は私を退屈させないおしゃべりな友達のようでもありました。これだけの条件のそろった妻を持つ私は、何というラッキーな夫だろうかと思います。
また彼女は実に質素な性格でした。あまり身なりをかまいません。化粧するわけでもなし、流行物の服を着るわけでもなし、アクセサリーなんかは着けているところを見たこともない不思議な女性でした。
それでも私は夫ですから、誕生日のお祝いにデパートに連れて行って服を選ばせるのですが、気に入った服を見つけると値札をじっと見ます。私はその服が欲しいのだなと思って、店員を呼ぼうとすると彼女は慌てて私を制し、小さな声で、「この値札の金額が欲しい」と人差し指と親指を丸めて見せるのです。
別に私は金銭的に妻に不自由はさせたことはありません。私の自慢は結婚して以来、彼女が臨時にお金を要求しても断ったことがありません。私が養子の身分だからそうするのではありません。本来、彼女がこの事業で得た資産は彼女の自由になるべきものでした。彼女は最初から私に全権を譲ってくれました。彼女は実に無欲な人です。一つも権利を主張しませんでした。むしろ私にお願いして必要なお金を申し訳なさそうにいつも求めていました。
彼女は、買いたいものを現金化してまで人のために惜しみなく施し散らす人でした。
彼女のこうした行為のすべてが、彼女の純真な信仰からにじみ出ていることを証しさせていただきます。
(おわり)
神さまからの贈り物は、私たちの想像を遥かに越える良いものですね。これで勝矢さんの証しを終わります。ここまでお付き合い下さりありがとうございました。