「聖イッサ伝」
第9章
1.堕落して、真の神に背いた人間に警告するために、創造主が選んだ人イッサは、二十九歳のときイスラエルに帰った。
2.彼がいない間、異教徒はイスラエルの民に、なお一層怖ろしい苦しみを与え、人々の気力はどん底に沈んでいた。
3.多くの民が、神の、モッサの律法を捨てはじめていた。野蛮な征服者との妥協に期待をかけて。
4.この災いに直面し、イッサは同胞にさとした。あきらめてはならない、罪の贖いの日が近づいている、と。そして、父祖の神への信仰を強めるようにと彼らに教えた。
5.「子どもたちよ、あきらめてはならない、絶望してはならない」と、天の父はイッサの口を借りて言った。「私はあなたがたの声を聞いた。あなたがたの叫びは私の耳に届いています。
6.「泣いてはいけない、わが愛するものよ。あなたがたの嘆きは、父の心に触れている。父はあなたがたを許しました。ちょうど、あなたがたの父祖を許したように。
7.「家庭を捨てて遊蕩に身を沈めるな。気高い感情を失うな。そしてあなたがたの声を聞く力もない偶像を拝むな。
8.「私の宮を、希望と忍耐で満たしなさい。父祖の宗教を捨ててはなりません。なぜなら私が、私一人があなたがたの父祖を導き、あなたがたの父祖の前に、幸せを積んだのだから。
9.「倒れた人を起こしてあげなさい。飢えた人に食物を恵みなさい。そして病人のところへ行って助けてあげなさい。私があなたがたに用意した最後の審きの日に、完全に清く、正しい人でいられるように」
10.イスラエルの民は、群れをなしてイッサのことばを聞きに来た。そして尋ねた。敵が神の宮を打ち倒し、聖なる器を壊してしまったのに、どこでどうして、天の父を賛美すればよいのか、と。
11.するとイッサは答えた。神の心にあるのは、人の手によって建てられた宮殿ではない。神の心にあるのは、人の心である。人の心こそ、神のほんとうの宮である、と。
12.「あなたがたの神の宮、言い換えればあなたがたの心の中、そこへ入りなさい。そしてそこを、神の心に叶う善い考えと忍耐と、そして確乎とした信念で照らしなさい。
13.「聖なる器とは、あなたがたの手であり目です。神の心に叶うものを見、神の心に叶うことを実行しなさい。あなたがたにいのちを与えた神は、あなたがたの心の宮におられます。その宮を清める儀式は、隣人に善を行うことで完成するのです。
14.「なぜなら、神はあなたがたを、神ご自身に似せて創られました ― 罪なく、善に満たされた、清らかな魂と心を持つものとして。悪のたくらみを抱くことのない、愛と正義に溢れた聖なる器として。
15.「それゆえ私はあなたがたに告げます。心を汚してはなりません。それは永遠にして、至高の神の宮だから。
16.「もしあなたがたが、愛と信仰の証として何かをしようとするなら、惜しまずにそれをしなさい。打算や、利益を期待して何かをしてはなりません。
17.「なぜなら、打算を考えたり、利益を期待して何かをしても、あなたがたの救いには、何の足しにもならないからです。むしろそれは、あなたがたを道徳的に退廃させてしまうでしょう。盗み、詐欺、そして殺人までもまかり通る、恐ろしい退廃に。」
「イエスの失われた十七年」(エリザベス・クレア・プロフェット著/下野博訳)より
(続く)