天国への一歩

神・霊・魂、霊の見分けの話題。キリスト教信仰が出発点です。

炎のおばちゃん(3)

この無敵かと思われるおばちゃんの上に君臨する

手ごわい相手というのは、この事業所を起こした人です。

この都市の女性票を一手に引き受けているような、

裏のドンとでも言えるすごい人が、何故かうちの職場のトップなのでした。

ドンと言っても、身近に接すると非常に気さくなさっぱりとした人で、

決して偉ぶらないのですが、おばちゃんにとっては

この人物が何よりも天敵なのです。

まさに目の上のたんこぶ。

おばちゃんの暴走を抑えているのは、この人の存在あってこそで、

決してこの人物の頭を飛び越えて、何かをすることはありませんでした。

自分としては、そこに神様の絶妙な采配を見た思いがしました。

しかし長く付き合っていると、おばちゃんの意外な面が色々と見えてきました。

激しさの塊のようなおばちゃんには、自分と交わる所は何もないと思っていたのですが、

ある時、職場のカフェでこんなことがありました。

バッハのゴールドベルク組曲が流れおり、おばちゃんは私に、

「これ○○さん(私)がかけたの?私バッハのこれが好きなんだよね~。いいよね~これ。」

と言ってきました。おばちゃんがバッハ???

バッハ好きという、おばちゃんと自分の意外な共通点でした。

おばちゃんは神様を感じる素質があるのかもしれない、とこの時思いました。

ある日おばちゃんと会話していて、なぜか話が移民問題のことになって、

「そんなにたくさん外国人が日本に入って来たら国が乱れる」

と私が言うのに対し、おばちゃん曰く、

「困っている人は助けなくちゃね。」

世界の平和のためだ、としみじみと理解ある口調で答えました。

へ?おばちゃんそんな風に思っているの?

誰よりも排他的なおばちゃんが?

まるで「四方の国~」と歌った明治天皇みたいだと思いました。

うちの施設の利用者さん(体がしんどくて休みがちな若い女性)が、

「家でゆっくりしたり、お母さんの手伝いとかしていたい。」

と言っていたのに対して、

「そうだよねえ。家の奥でゆっくりと横になったり、家のことしてたいよねえ。」

と、しみじみと同情的な口調で感想を述べていました。

「おばちゃんも実はしんどいんだ。働く女性の辛さがどんなものか、ちゃんと分かっているのだ。」

と感心しました。

おばちゃんには子どもがいないのですが、誰よりも自分の飼い犬を大切にしているようでした。

ある時おばちゃんが撮った犬の写真を見せてもらいました。

そこにはまるで人のような佇まいの、賢い瞳を持った犬の姿がありました。

「この犬はおばちゃんに深い信頼を寄せている。」

すぐにピンと来ました。

また写真の撮り方から、おばちゃんの飼い犬に対する愛情が伝わってきました。

聞けば幼犬の頃から育てたみたいで、それはそれは大切にしてきたようです。

おばちゃんは利用者さんに対して、いつも容赦ない指導をするので、

自分の犬もさぞかし怯えた顔をしているかと思いきや、むしろその逆でした。

おばちゃんは深い愛をこの犬に注いできたんだ、と思いました。

動物をボコボコにぶん殴りそうなおばちゃんなのに、

予想とは反対の行動に感心しました。

(つづく)