最近私が偶然行き合った女性で、数年間ある会社に勤めて生活しているうちに、
ある先輩が共働きをしながら勤めていて流産しそうになった。
そして、医師の手当てを受け、無理をして注射で押さえて、
やっと分娩してみたら身障児であったというのである。
そして長いこと苦労を重ねているその先輩の生活の実状を見るにつけ、
その女性は結婚に対する恐怖心が植えつけられ、結婚を前向きに考える気持ちが起きないと
言っているのを聞いたのであるが、そういう事実が他にも多く存在しているのである。
また今日、三十代ですでに更年期障害を起こしている家庭婦人が少なくない。
およそ女性にとって、三十歳前後の年齢というものは、
精神的にまだ一人前の人間として完成していない。
これから本気になって人生を学び、本当の女性の花を咲かせ、
実を結ばなければならない年齢であるにもかかわらず、三十そこそこで、
更年期障害を起こしているということを考えると、
いかに女性が肉体的にも精神的にも破壊されているか、女性が本来の女性に
ふさわしくない生活を強いられているかを認識しなければならない。
しかも、戦後最も解放され、物質的にも恵まれた中において、
なおかつ病人がどんどん増え、心淋しく人間同士が互いに孤立し合って、
嫉妬心や競争心や独占欲、恨みや憎しみや、そして、絶望感などの中で
生活していくということは、決して、女性の幸福を裏書きする現象ではない。
(略)人工栄養で育った子供というものは、結婚に失敗する率が、
母乳で育った子供よりも遥かに高いということが、すでにアメリカで報告されている。
(略)子供が幼い時の愛情の欠乏のために、成長後に不良な青少年になって
社会に迷惑をかけ、家庭も破壊されるということが起こるならば、
これは物やお金ではとうてい償えない、大きなマイナスであるということも
考えてみなければならない。
そして、女性が職場でかせいだ数百万円の貯蓄というものと比べて、
果たして本当に計算が合うのかどうか、考えてみなければならない。
(つづく)
「愛の創造」(鴨志田恒世著)P.103-104